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4月8日(水)
桜が咲き乱れる春。
出会いの春。
入学式の春。
だがオレはその日………
―――走っていた。
「はぁ…はぁ……」
「だ、大丈夫?陵くん」
「も、もうオレはダメだ……。美奈だけでも、先に行け」
入学式&始業式当日。
オレは幼なじみで、今日から一緒の高校に通うことになった朝霧美奈と一緒に、ゆっくりと登校するはずだった。
だが………
前の日によく眠れなかった美奈は案の定寝坊し、のんきに朝食を食べたせいで、もはやタイムリミットギリギリだった。
中学・高校とも部活をやっていないオレにとって、朝からのマラソンはきつすぎる。
「ほら、あとちょっとだよ。頑張ろう!陵くん」
美奈が膝を抱えて倒れ込みそうなオレに屈託のない笑みを浮かべる。
―――なんで美奈は息一つ切らしてないんだ?
でも、美奈に励まされると自然に力が出てくる。
体力も少しは回復したようだ。
「……美奈にそこまで言われたら、頑張らないわけにはいかないな」
「うん!!」
オレと美奈は全速力で学校へと向かった。
遅刻まで、あと5分。
「おやおや、陵と美奈じゃないか。初日から夫婦揃っての登校ですか~?」
ドカーン!!!
「ぐはっ!!」
何かにぶつかったような気がした。
「……ん?」
「どうしたの?陵くん」
「い、いや……だ、誰か人にぶつかったような……」
途切れ途切れ、美奈に説明する。
「あっ、達也く~ん!先行くね~!!」
達也?
どこにいるんだ?
何かが空中に舞い上がり、地面に叩きつけられた音がしたが、とりあえずスルーした。
初日から遅刻はまずいからな。
「はぁ……はぁ…」
「はぁ……。やっと着いたね」
美奈がほっと胸を撫で下ろす。
8時29分。
ギリギリだ。
「あれ?」
美奈が前方を指差す。
「陵くん。あれってなに?」
「ん?」
美奈が指差している方を見ると大きな掲示板の前に上級生と新入生がごちゃ混ぜになっていた。
「ああ……今日は確かクラス発表の日だった」
「へぇ~そうなんだ」
「その通り!!よって、今日の遅刻者チェックは行われないので、多少遅れても構わないということだ!!」
いつの間にか、隣に達也がいた。
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