step1:prologue

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背中から床に叩きつけられた痛みよりも、目の前に広がっている状況の方がとんでもないことになっていた。 ムニュっとした感触がしたと思ったら…… 穂波さんの柔らかい胸がオレの心臓を圧迫し、髪からはシャンプーとリンスの心地よい香りがして、耳元では穂波さんの息づかいが聞こえ、まさに五感をフル活用しているようだった。 「ひゃっ、ひゃあ~!!」 「うわぁ~!!」 オレと穂波さんが悲鳴を上げたのは、ほぼ同時だった。 「ご、ごめんなさい~!!」 穂波さんはかなり焦っていたようで、一目散に教室から飛び出していった。 ガシャーン!! 「はわわわっ!!」 ……廊下で穂波さんが何かにぶつかった音がした。 「いたたた…」 「お~。初日からやってくれたなぁ~陵!」 「な、なにがだよ」 達也はニヤニヤした目でオレを見ている。 「まさかお前と委員長がそんな関係だったとは…」 「なっ、何をバカなことを言ってるんだ!!」 「しっかし、お前の女性恐怖症もなかなか治らないねぇ~」 「……ほっといてくれ」 穴があったら入りたい、というのはまさにこのことだろうか。 「それにしても、委員長の反応もすごかったな~」 「……あれは嫌われたな」 「気にすんなって。委員長は優しいから、きっと許してくれると思うぜ」 達也に励まされて、オレも体育館へと向かった。 「え~、全校生徒の諸君。今日から新しい学年がスタートします。それぞれの学年に定められた目標に進み、また…」 「ふぁーあ……何で毎回校長の話は長いのかねぇ」 オレの後ろで達也が不満を漏らしていた。 ―――体には、まだ穂波さんに触った感触が残っていた。 話をするのは簡単なのに、手に触れただけでも逃げ出したくなる。 あの細い体……ちょっと抱きしめたら壊れてしまいそうで、恐ろしかった。 どうやったら、あんな細い足で体重を支えられるのかと思ってしまう。 「……触ったんだよな」 「ん?何に触ったんだ?」 「う、うわぁっ!」 オレは、周りに聞こえてしまうくらい大きな声を出してしまった。 オレの耳元から、達也がささやいてくる。 「ほう……ついにお前にも恋の芽生えってやつか……?しかも相手は同じクラスの委員長…」 「なっ……」 自分でも顔が赤くなっているのが分かる。 だが、そのとき……
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