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背中から床に叩きつけられた痛みよりも、目の前に広がっている状況の方がとんでもないことになっていた。
ムニュっとした感触がしたと思ったら……
穂波さんの柔らかい胸がオレの心臓を圧迫し、髪からはシャンプーとリンスの心地よい香りがして、耳元では穂波さんの息づかいが聞こえ、まさに五感をフル活用しているようだった。
「ひゃっ、ひゃあ~!!」
「うわぁ~!!」
オレと穂波さんが悲鳴を上げたのは、ほぼ同時だった。
「ご、ごめんなさい~!!」
穂波さんはかなり焦っていたようで、一目散に教室から飛び出していった。
ガシャーン!!
「はわわわっ!!」
……廊下で穂波さんが何かにぶつかった音がした。
「いたたた…」
「お~。初日からやってくれたなぁ~陵!」
「な、なにがだよ」
達也はニヤニヤした目でオレを見ている。
「まさかお前と委員長がそんな関係だったとは…」
「なっ、何をバカなことを言ってるんだ!!」
「しっかし、お前の女性恐怖症もなかなか治らないねぇ~」
「……ほっといてくれ」
穴があったら入りたい、というのはまさにこのことだろうか。
「それにしても、委員長の反応もすごかったな~」
「……あれは嫌われたな」
「気にすんなって。委員長は優しいから、きっと許してくれると思うぜ」
達也に励まされて、オレも体育館へと向かった。
「え~、全校生徒の諸君。今日から新しい学年がスタートします。それぞれの学年に定められた目標に進み、また…」
「ふぁーあ……何で毎回校長の話は長いのかねぇ」
オレの後ろで達也が不満を漏らしていた。
―――体には、まだ穂波さんに触った感触が残っていた。
話をするのは簡単なのに、手に触れただけでも逃げ出したくなる。
あの細い体……ちょっと抱きしめたら壊れてしまいそうで、恐ろしかった。
どうやったら、あんな細い足で体重を支えられるのかと思ってしまう。
「……触ったんだよな」
「ん?何に触ったんだ?」
「う、うわぁっ!」
オレは、周りに聞こえてしまうくらい大きな声を出してしまった。
オレの耳元から、達也がささやいてくる。
「ほう……ついにお前にも恋の芽生えってやつか……?しかも相手は同じクラスの委員長…」
「なっ……」
自分でも顔が赤くなっているのが分かる。
だが、そのとき……
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