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―――ゾクッ!!!
「―――!?」
後ろの方から、ものすごい殺気がした。
「ど、どうした陵?」
「な、なぁ……。今、後ろから誰かの殺気が伝わってきたような……」
「はぁ?んなわけねーだろ。気のせーだよ」
「そ、そうだよな…」
しかし、どうもあの殺気は昔に経験していたような気がした。
帰りのHRが終わり、昇降口を出ると、校門の前で美奈が待っていた。
「よっ」
「わわっ!」
急に後ろから声をかけられた美奈は、予想通りのリアクションをした。
……美奈とは普通に接することが出来るんだけどな。
……まあ、美奈は家族みたいなものだからな。
それに、美奈には失礼だが、まだまだ子どもっぽい体つきだもんな。
「遅かったね~陵くん」
「まあな。それより、美奈は部活に入らないのか?」
一応、オレや達也が所属している帰宅部があるが……
「うんっ!だって、陵くんと一緒に帰りたいもん!」
「……あのなぁ」
「??」
まったく悪びれた様子もなく、美奈は屈託のない笑みをオレに向ける。
……そんなにはっきり言われたら、さすがの幼なじみのオレでも恥ずかしくなる。
「……よし。今日は久々にアイスでも食ってくか。入学祝いだから、オレがおごってやるよ」
「えっ、ホントに?やった~!ありがとう、陵くん!」
教室での穂波さんとのことや、体育館での殺気のことを忘れてオレは美奈と一緒にアイスクリームを買いに商店街まで足を伸ばした。
「うわぁ~おいし~い!」
「……よくそんなに食えるもんだな」
シングルのアイスを食べているオレに対して、美奈は上からバニラ・オレンジ・ストロベリーのトリプル重ねだった。
「だって、せっかく陵くんが買ってくれるんだもん。ダブルじゃもったいないよ」
シングルという選択肢は最初からなかったのか、と突っ込みたくなる。
「あ……」
「どうした?」
美奈がふと足を止めた。
オレが美奈の視線を追うように上を見上げると、春の象徴である桜吹雪が美しく舞っていた。
「……きれい…」
「――美奈……?」
ドキッとした。
桜吹雪のせいだろうか、美奈の顔がとても大人びて、とても可愛く見えた。
こんな顔も出来るようになったんだなと、ちょっと感心した。
「あっ、アイスクリームが溶けちゃうよぉ~!」
「…………」
……気のせいか?
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