step1:prologue

8/9
前へ
/23ページ
次へ
「ん~、この肌触りの良さ!!3年前と何一つ変わってないわねぇ~!!」 「だ、誰か助け…」 ガクリ…… 「あら?陵?寝ちゃったのかしら?」 岬姉の容赦ない攻撃に撃沈したオレは、達也と一緒にお花畑をさまよった…… 「ん……?」 「あら、起きたのね」 目が覚めると、オレはベッドの上にいた。 どうやら、気絶していたのは1時間くらいだったようだ。 「さあ、陵が起きたことだし、夕飯食べようか!」 「……え?」 リビングの机の上を見ると、さっきまであったインスタントラーメンの影はどこにもなく、岬姉手作りの料理が並んでいた。 「ほらほら、早く席について」 「あ……うん…」 岬姉に促されるまま席につく。 目の前では、炊きたてのご飯と味噌汁が湯気を上げている。 「いただきま~す!」 「い、いただきます」 岬姉に倣って挨拶をすると、視線を下に移す。 まずは、その家の伝統の味と言われている肉じゃがを一口食べてみる。 「あ……美味しい」 「当然よ。誰が作ったと思ってるの?」 岬姉は自画自賛していたが、まさか岬姉の料理の腕がここまで高いとは思わなかった。 肉じゃがだけでなく、唐揚げや煮物も抜群の味だった。 「本当に美味しいよ、岬姉」 「あら……そこまで言われると照れちゃうわね」 岬姉は多目に作っていたが、食欲をそそられたオレは次々と胃の中に納めていった。 「ところで……」 「ん?」 そろそろ食事も終わりに差し掛かったころ、岬姉が話を切り出した。 「あたし、明日から陵と同じ学校の生徒になるからね」 「……え?」 一瞬、自分の耳を疑ったが、体育館で感じた殺気(おそらく達也に向けられたものだろう)が岬姉から放たれていたのなら、筋の通らない話ではない。 「そっか……美奈も喜ぶと思うよ」 「ふふ……明日、朝イチで会いに行くわね」 そこで、机の上に並べられた料理は全て間食された。 「ごちそうさま、岬姉」 あとはオレが皿洗いをして、岬姉はそのまま帰るのかと思ったそのときだった。 「あ、そうそう。学校生活はどう?陵。今日は何か変わったことはなかった?」 「変わったこと?」 「そう。変わったこと」 岬姉は何やら楽しそうな顔をしている。 まあ、せっかく来てくれたんだから、色々と話をするのもいいだろう。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加