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空、そら、ソラ。
見渡す限りのパノラマは、あたしの憂鬱を少しでも軽くしようと頑張ってくれてるみたい。
「……ありがと」
心の中で呟いた言葉は、意図せずともあたしの唇を動かす。この慣れた動作は誰もいないこの場所で、虚しい響きを生んだ。
ただ、それだけ。
アホみたいに突っ立って一時間も経った頃、そら色と真っ白のコントラストは相変わらずに眩しくて……なんだかうんざりしてきたわ。
冷たそうな深い青に覆い被さる入道雲が嫌でも視界に入ってくる。水分を多分に孕んだ巨大なそれには、妙な威圧感を感じた。あたしの大嫌いな季節の訪れを、無理矢理に感じさせているようだった。
そして時折、透明の風が吹き抜ける。行きつけの美容院で昨日切って貰ったばかりのショートヘアが、チクチクとあたしのほっぺたを撫でれば、いっそう憂鬱の重みは増すばかり。
「あーあ、丸坊主にしてくれば良かった……」
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