Act1 〝青空〟

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 下界でざわめく木々の音色は、これから起こる事態――あたしの身に降りかかる「自由」への確約を耳打ちしているようにも取れた。 「なんでこんなに空は晴れ渡っているのにさあ。天気はいいのにさあ、あたし、死にたいのかなあ」  爽快な青空。今のあたしにとってそれは、巨大な憂鬱を拭うのに、「ほんの少し」に過ぎない作用をもたらす。そして多分、重く沈んだこの心を元通りにすることは叶わない。  それでも今日は、「ほんの少し」だけ期待して来たんだ。  悲しいことがあると、いつも此処を訪れた。コンクリートに染み込んだ涙は、もう数えられない。数える意味も見出せない。何も語らないフェンスは、あたしと同じ位の背しかない。簡素なそれに指を絡めると、今でもなんとなく、心が落ち着く気がする。 「死ぬ事は、恐くないわ」  目を閉じて、自然と吐いた台詞を脳内に反芻すれば――お世話になったフェンスの外側で、十八年間の思い出が走馬灯のように蘇る。自動再生は止まらない。  それらは全部全部、目を背けたい色々。
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