2人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
「降参ですか?ツルギ様。」
声は上から聞こえた。
見上げようとしたら、ハラハラと葉っぱが数枚落ちてきた。
コイツ…木の上の方に隠れてたのか。私が上れないのを知っておきながら…。
「よっ!」
スタッ!っと、まるで忍者のように華麗に木から飛び降りた。
彼の名前は陸丸<りくまる>。私の側近(遊び相手とも言う)の一人だ。
着物は少し胸元がはだけてるし、髪は癖っ毛だし、裸足に下駄で…側近と呼ぶのには、正直言って似つかわしくない。
私は[陸丸]と呼ぶのも面倒だから、[陸]と呼んでいる。
ま、程良い略し方でしょ?
「俺はこーみえて隠れるのは得意な方ですし?」
得意気にニヤつく陸がいた。
「き…木の上なんて反則よっ!!」
と、負け惜しみを叫ぶ私。
素直に悔しい。
「あまりツルギ様をからかうのは止めなさい、陸丸。」
後ろから草履が砂を蹴る音と一緒に、聞き慣れた声がした。
彼は天衛門<てんえもん>。彼も私の側近(子守役とも言う)の一人。
羽織りを脱いで軽い格好にはなっているが、袴もピシッとしてて、黒い長い髪は後ろで束ね、陸丸に比べたら遥かに側近に似つかわしい。
天衛門は亡くなった母上の代わりに私の子守役として付けられた。
今では兄のような存在だ。
最初のコメントを投稿しよう!