日常

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目に浮かぶ悔し涙。 天は察して、私の顔を胸に沈めてくれた。 私の頭を撫でながら陸に向かって「馬鹿。」とだけ言った。 陸は「申し訳御座いません、ツルギ様!」と跪<ひざまづ>いた。 私は十二単を脱いだり、木刀を振り回したりするじゃじゃ馬だが、仮にも姫。 なかなか城を出れない私にとっては、下町の店などに気軽に行く事は出来ない。山賊の一件があってからは、さらに難しくなった。 だから、簡単に城から出れる陸や天に頼むのだ。 「どうかお許しをっ!」 目の前に必死に土下座をして謝る陸がいた。 「……蓬団子。」 私は少し愚図ついた顔で言った。 「へ?」 陸は顔をあげ、目の前に突き出された私の手に気付く。 陸は慌てて、華楽堂の蓬団子の入った紙袋を持ってきて、中から一つ出して私の手に置いた。 私はそれを受け取ると天の後ろへ隠れて頬張った。 …やっぱり美味しい… 久々の蓬団子の美味しさに、私の顔はいつもの表情に戻った。 「ツ…ツルギ様…?」 恐る恐る問う陸の声。 そろそろ許してやるか。 私は悔し涙の欠片もない笑顔を陸に向けて「ばーかっ!」と言った。 「あははは」と、今見た陸の傑作なマヌケ顔を笑いながら自分の部屋に戻った。
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