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私は部屋に着くと、襖<ふすま>を閉めた。陸のあの表情が目に浮かぶ。
「くすくす」と私が思い出し笑いをしていると、襖の向こうで天の声がした。
「ツルギ様、お着替えをお持ちしました。」
「ありがとう。入って。」
天は私が十二単を脱いでいたのを気遣って、着物を持ってきてくれた。
「陸は?」
私は陸の姿が見えないのを天に訪ねた。
天はニコッと笑うと、陸の真似をしながら「畜生!!騙された!!…って悔しがってましたよ。」と、教えてくれた。
「今は、汗を流して来るって井戸の方へ行きました。」
「そう…私、やり過ぎたかしら?」
着替えている私に気を使って目を閉じて襖の近くに座っている天に聞く。
「陸丸にはあれぐらいが、ちょうど良いでしょう…ですよね?陸丸。」
天は襖の向こう側に言った。
しばらくすると、陸の声が返ってきた。
「…あー…天衛門、手拭いある?」
天の質問とは全然関係の無い答えが。
天は懐から手拭いを出して、僅かに開けた襖の間から陸に渡した。
「…さんきゅ…」
どこか気弱な陸の声。
襖の向こうに私に、何と言えばよいのか困っているようだ。
「陸丸、今度からは何か拭く物を持ってから水浴びに行って下さいね。」
私の代わりに天が陸に話かけた。
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