日常

8/9
前へ
/24ページ
次へ
しばらくすると 「…う…うるせぇよ」と、小さい声が返ってきた。 私は帯締めを天に手伝わせて身なりを整えると、襖をスパンッ!と勢いよく開けた。 直ぐ側に未だに頭をガシガシと拭き続けていた陸は、少しビクッとして、私の顔を見た。 「陸っ!!」 私は大きな声と共に、陸の頭に手をやった。 「明日も稽古に付き合いなさい。いいわね?」 私は陸の頭を拭きながら言った。 「は…はい!」 陸はさっきの気弱な声とは違って、明るい返事を返してくれた。 「ツルギ様、夕飯の準備が出来たそうですよ。」 天は私が脱ぎ捨てた剣道着をたたみながら教えてくれた。 気が付けば、辺りはすかっり日が落ちていた。 今日の夕飯は、ご飯に煮魚、味噌汁と漬け物だ。 煮魚はニギスの醤油煮で、味噌汁は豆腐とワカメだった。 美味しい夕飯に箸がすすむ。 特に煮魚が柔らかくて、醤油の甘さと一緒に煮ている生姜<しょうが>が絶妙だ! 私はぺろりと夕飯をたいらげて、「ご馳走様」と手を合わせた。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加