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最近、両親の様子が変だ。
リョウの体を心配しているのは分かるのだが、家に居る事が多い。
リョウの実家は小さなパン屋を営んでいる。
しかし、普段は朝早くから仕事に入る両親が、ここ数日間休んでいるのだ。
どちらかと言うと貧乏な家庭。
自分の事はいいから…と言うのだが、父と母は話をそらしては仕事に手を付けようとしない。
心配になったリョウは、実家の経営する店へと足を運んだ。
そして絶句…。
なんと両親は、店を売ってしまったのだ。
全てはリョウの為。
リョウの体を守る為にはこうするしか無かった。
手術代が必要だったのだ。
「私達の事は気にしないで。
どこにだって働き口はある。
この金でお前は
生きられるんだから。」
そう…真剣な眼差しで話す母を目の前に、その時初めて涙を流した。
両親の大切な想いを、踏みにじるわけにはいかない。
生きる。
なんとしてでも。
リョウは固く誓った。
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