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大東遼(おおひがし りょう)。それが両親が与えてくれた僕の名前だ。決して裕福とは言えないが、何不自由なく高校二年生になる今まで育ててくれたことに対しては、素直に感謝している。
でも、何故なんですか父さん母さん。何故、僕の名前をもう少ししっかりと考えてくれなかったのですか。
◎
「早く来いよ大統領!」
授業が昼休みに突入した直後、教室の一角にいた友人が声を上げた。既に察しの付いた方も多々いると思うが、『大統領』というのは僕のあだ名だ。大東遼。読み方を変えると『大統領』という訳だ。
小・中学校の頃は嫌で嫌で仕方なかったが、今となってはいい加減に慣れてしまった。
「その呼び方やめろって言ってるだろ」
僕は弁当を片手に、文句を言いながら友人の元へと向かった。教室の窓際一番後ろという誰もが望む好位置に座る色黒の短髪の男が、僕を大統領と呼んだ張本人・小浜。そして、小浜の座席と机をくっつけて座っている顔の厳つい男が麻生である。
僕ら3人はいわゆる仲良しグループで、昼食は勿論遊ぶのもいつも一緒だ。ちなみに僕らのこの昼食は、名前のせいで周囲から密かに『三ヶ国首脳会議』と呼ばれている。日本とアメリカはわかるが、僕は一体何処の国の大統領ということにされているのだろうか。
「さて、では本日の議題に入ろうか」
僕が机を二人の座席に付けるなり、開口一番麻生が口を開いた。いつものことながら、口調が硬い。
「今日は何を話すんだったっけ?」
「忘れるなよ! 俺がどうやってコクるか考えてくれる約束だろ?」
口の周りにご飯粒を付けた小浜に怒られ、僕はその約束のことを思い出した。そういえば、昨日相談されたけど面倒だったから「また明日な」って今日に回したんだったっけ。
「しかし小浜、はっきり言って無謀だと私は思うぞ」
厳つい顔を険しくさせて、腕を組みながら麻生が言った。正直僕もそう思う。なんせ小浜が恋したのは、遥か遠くアメリカからやって来た留学生・ソフィアさんなのだから。
万が一この恋が実れば、彼女は晴れてファーストレディーとなる訳だな。
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