三ヶ国首脳恋愛会議

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「無謀かどうかはやってみなきゃわかんないだろ? 実はな、昨日徹夜でラブレターを書いてみたんだ」  少し恥ずかしげに頬を桃色に染め、小浜は赤いハートマークのシールで封をしてあるベタなラブレターを鞄から取り出した。ハート型のシールなんてこっぱずかしいもの、よく付けられたものだ。 「せっかく書いたんだし、渡すべきかな?」 「それは、中を見てみないとわからないな」  麻生は口の端を吊り上げ笑うと、小浜の手から素早くラブレターを奪い取り封を切った。僕も内容が気になるので、食べかけの弁当を置いて急いで麻生の後ろに回った。  恋文の中身は、ハート型のシールなど相手にならない程こっぱずかしい内容だった。その初々しい文章を読者の皆様にもお伝えしたいのだが、そうすると小浜があまりにも可哀想なのでやめておく。 「おっ、お前ら読んだなら感想くらい聞かせろよ」  恥ずかしさのあまり両手で顔を覆った小浜が、小さな声で僕と麻生に訴えた。 「それでは言わせてもらうぞ小浜」 「あっ、あぁ……」 「ソフィアさんは、まだ漢字読めないぞ」  麻生の一言で、小浜は椅子からヘナヘナと床に崩れ落ちた。結局小浜は、睡眠時間を削られた上に友人二人の前で恥をかいただけだった。 ◎  その後もああでもないこうでもないと会議を続けた結果、最終的に「男たるもの、やはり面と向かって直接告白すべきだ!」という小浜の意見が採用されることとなった。じゃあ何でラブレター書いてきたんだよお前。  かくして僕らは、放課後を迎えるなり自転車小屋へと向かった。本日、ソフィアさんはボランティア活動で駅前の清掃活動に勤しんでいるらしい。今からそこに向かい、ソフィアさんを見つけ次第小浜が告白というシンプルな計画だ。 「これは……」  自転車小屋に到着すると、一足先に到着していた麻生が絶句していた。 「どうかしたのか?」  僕が尋ねると、麻生は仲良く三台並んでいる僕らの自転車のうち、真ん中に停めてある自分の自転車を無言で指差した。  麻生の自転車は、尾灯の上の辺りに黒い油性ペンで「ローゼンメ○デン」と落書きされていた。その右側に停めてある小浜の自転車には「エアフォースワン」と書かれており、左側の僕の自転車にはシンプルに「バカ」と書かれていた。何気に一番傷つく。
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