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でもすぐに秋音の笑顔は消えた。
秋音は毎年この日になると少し淋しそうな顔をする。
兄のことがあるから、きっと私と似たような気持ちなんだろう。
私が私の兄みたいな《突然自分の前から居なくなる》そんな不安な気持ち。
「ねぇ香奈恵」
秋音が不意に私の名前を呼んだ。
「何?」
秋音がすっごく寂しそうな悲しそうな、そんな顔をしている。
「どこにも…どこにも行かないでね?」
秋音は声を少し震わせてそう言った。
きっとすごく不安なんだろう。
私は今にも泣き出しそうな秋音の頭を撫でた。
「大丈夫。私は絶対どこにも行かないから」
「うん」
そんなふうに秋音をなだめながら学校へ向かった。
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