7人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「そういえば、今日かな兄の月命日だね」
「うん」
秋音の言うとおり、今日6月10日は兄の月命日だ。
そして兄の誕生日でもある。
偶然だろうか、それとも必然だろうか。
毎年この日になると、すごく胸が痛む。
兄の命日ほどじゃないけど。
「あっそうだ、これ」
秋音は何かを思い出したように自分の鞄の中を探り始めた。
少ししてから、可愛い袋を持って顔をあげた。
「これ、プレゼント✨」
「あぁ、ありがとう」
「で、これが月命日のやつね」
「うん」
私に袋を渡すと、二イッと微笑んだ。
秋音は毎年兄の誕生日にプレゼントをくれる。
でも《おめでとう》は言わない。
私が言わないでと言ったから。
言われたら何だか今より兄が遠くなっていく感じがするからだ。
手探りの闇がそれ以上に深くなる感じ。
実際のところは自分でもよく分かんないんだけど。
でも秋音は、私のよく分からないワガママもすんなり聞いてくれる。
秋音も5つ上の兄がいるからってこともあるんだろうけど。
それに毎月の月命日もきちんと兄にお供え物を用意してくれている。
秋音は結構真面目にする子だから。
「♪~」
当の本人は、機嫌良く鼻歌を歌っている。
「ごきげんだね」
「えっそうかな?」
「うん。今日何かあるの?」
「今日はね、いとこがくるんだ♪」
秋音…語尾に音符が付いてるよ。
そんなこと言っても仕方がないから言わないでおこう。
「そうなんだ。良かったね」
「でも学校嫌だっっ」
秋音はそう言うとうなだれた。
確かに、学校は面倒くさくて嫌だ。
「仕方ない」
「だよね~」
私が言うと秋音はもーっと嫌な顔をした。めんどくさい子だ。
「早く行かないと遅刻になるよ」
私は秋音にそう言うと早足で歩きはじめた。
「あっちょっ待って~」
それを見た秋音は、慌てて私の後ろを追ってくる。
後ろにそんな秋音を見て私は学校へ向かった。
.
最初のコメントを投稿しよう!