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音楽室に着くと、そこには入部希望の生徒や、上級生の先輩たちでいっぱいだった。
無理も無い。ここの部活は、毎年部員数が70人を余裕で越えている。
私が入部した年、部活の部員数は91人だったくらいだ。
「どこの楽器に行きたいですか?」
入り口でぼーっとしていると、小柄な女子部員が声をかけてきた。靴の色からして、多分3年生だろう。
「あの、チューバの所に行きたいのですが……」
チューバとは、とても大きな低音楽器で、吹奏楽の土台となる大事なパートだ。
普段はリズムばかりだけど、私はそれがとても楽しくてしかたがなかった。
だから高校に入っても、チューバをしようと思っていた。
「本当に?実はあたしもチューバ担当なんだよ。チューバってあまり希望者少ないから、困ってたの。よかったぁ」
女子部員は、嬉しそうに練習場所に案内してくれた。
「そういえば、まだ自己紹介してなかったね。あたしは島辺千鶴、よろしくね」
そういうと、歩きながら千鶴先輩がこちらを振り返る。
「今チューバパートは4人いるけど、みんな高校から始めた初心者ばかりなの。那奈美ちゃんみたいな経験者が来てくれてよかった」
嬉しそうに話す千鶴先輩をみていると、なんだか私まで楽しい気分になってくる。
そう思っていると、千鶴先輩の脚がある教室の前で止まった。
中からは低く、懐かしい音が響いていた。
「ここがあたし達の練習場だよ」
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