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「君、名前は?」
「な、那奈美と言います」
「那奈美ちゃんか、よろしく」
そういうと先輩は、私に質問してきた。
「そういえば、那奈美ちゃんは初心者?」
「いえ、中学の時にやっていました」
「経験者か。じゃあ、早速だけどやってみてよ!」
先輩に言われるがまま、私はチューバを吹くことになった。
久々に触るチューバの感触。構えてみるが、やはり重い。
私は色々と懐かしみながら、チューバの音を出してみた。
すると聞き慣れた低い音が、教室の中に響く。
吹き終わると、側にいた2年生の先輩が私に近づいてきて、褒めてくれた。
「上手いじゃない!」
「やっぱり経験者は違うな」
ちょっと照れ臭くて顔を赤くしていた私に、先輩は笑顔で頷いてくれた。
まるで太陽のように、屈託のない笑顔で。
この日、先輩との出会いで私の人生は変わった。
あの時、私は先輩のあの笑顔に一目惚れし、同時にほろ苦い、私の部活生活が始まったのだった。
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