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私が部活に入部して数カ月、季節はいつしか夏になっていた。
夏、それは私たちに吹奏楽部員にとって、目標といっいい大きな大会、コンクールが待っていた。
そのためこの時期になると、2、3年生はコンクールの練習に明け暮れる。
1年生の私はコンクールには出られない。先輩とすれ違いの日々が、続いていた。
「那奈美、例の先輩とは上手くいってるの?」
毎日のように、友達私の恋の展開具合を確認してくる。正直うっとうしい。
「いつもとおなじだよ」
毎日答えるのもさすがに面倒なので、いつものようにあっさり流す。
「何してんのよ!早くしないと先輩、他の人に取られちゃうよ」
友達の応援してくれる気持ちは嬉しいが、今の部活の状況を知らない人に言われたくたない。
「だって、先輩達3年生にとっては、今年が最後のコンクールだから。一生懸命練習している先輩の邪魔、しなくないから」
つい本音がポロリと出してしまったが、友達はこれ以上何も言わなかった。
そして迎えた本番。私は先輩達の譜面を持つ係だったので、コンクールメンバーに同行していた。
リハーサルで最後の調整をしているとき、私はふと先輩を見た。
その時の先輩は、今までにないくらいの真剣な顔付きをしていた。
「先輩……」
あまりのかっこよさに、私は見とれていた。
いつもは優しい笑顔の先輩でも、いざ楽器を構えるととてもかっこよかった。
そんな先輩の様子をみていると、心臓が破裂しそうな勢いで、動いているのがわかった。
(誰にも聞こえていませんように……)
正直恥ずかしかった。
結果、N高は県大会に進むことが出来なかった。
その時の先輩の泣き顔を、今でもよく覚えている。
どれだけ言葉をかけようと、自分は何も出来ない。私は無力だ。
でもせめて何かしたいと思った私は、先輩にメールを送ることにした。
『先輩お疲れ様でした。県大会には進めませんでしたけど、私は先輩方の演奏が一番よかったです』
送信っと……。
メールを送ったものの、正直不安だった。
あれだけ落ち込んでいた先輩にあんなメールなんか送って、ちゃんと返事をくれるのだろうか?
もし、嫌われでもしたら……。
その時、先輩からの返信が届いた。
私は恐る恐るそのメールを開いた。先輩からのメールの内容はこうだった。
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