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「りょうちゃんーみてみて!!」
お母さんが嬉しそうに、笑っている。その線の細い手には、白くて小さい箱が一つ。
よくみればその笑顔は、あたかも自慢するかのような含み笑い。
彼女はそれを目立たせるかのように軽く縦に振ってみせた。
「なにそれ??見えてるから振らなくてもいいよ。」
「もう!!またゲームなんかしてるの??いい加減にしなさい!」
「なんだよいきなり…今いい所だからちょっと待って💦」
お母さんはしゅんとした。仔犬のようにうつむいている。僕はゲームをポーズに切り替えた。
「…で、なんなの?」
ゆっくり顔をあげ、彼女は寂しそうな顔で微笑んだ。
「携帯電話、ネットで取り寄せたの。」
「ケータイ!?僕の??」
「そうよ。最近は色々物騒だし…。りょうちゃんも小学校入学して、一人で出歩いたりする機会も多くなるしね。」
「うわーありがとう!!早速設定とか…そうだ、メアドどうしようかなあ!?」
ふふ…っと、お母さんが意地悪く笑うのが見えた。
「残念でした!その携帯は子供向けで、通話専用なのよ」
「…なんだ。つまらないなあ。メール出来ないケータイなんてただの電話じゃん!!」
「何いってるの。だから"携帯"する"電話"で"携帯電話"なんでしょう??」
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