はじまり

2/3
前へ
/15ページ
次へ
「りょうちゃんーみてみて!!」 お母さんが嬉しそうに、笑っている。その線の細い手には、白くて小さい箱が一つ。 よくみればその笑顔は、あたかも自慢するかのような含み笑い。 彼女はそれを目立たせるかのように軽く縦に振ってみせた。 「なにそれ??見えてるから振らなくてもいいよ。」 「もう!!またゲームなんかしてるの??いい加減にしなさい!」 「なんだよいきなり…今いい所だからちょっと待って💦」 お母さんはしゅんとした。仔犬のようにうつむいている。僕はゲームをポーズに切り替えた。 「…で、なんなの?」 ゆっくり顔をあげ、彼女は寂しそうな顔で微笑んだ。 「携帯電話、ネットで取り寄せたの。」 「ケータイ!?僕の??」 「そうよ。最近は色々物騒だし…。りょうちゃんも小学校入学して、一人で出歩いたりする機会も多くなるしね。」 「うわーありがとう!!早速設定とか…そうだ、メアドどうしようかなあ!?」 ふふ…っと、お母さんが意地悪く笑うのが見えた。 「残念でした!その携帯は子供向けで、通話専用なのよ」 「…なんだ。つまらないなあ。メール出来ないケータイなんてただの電話じゃん!!」 「何いってるの。だから"携帯"する"電話"で"携帯電話"なんでしょう??」 .
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加