二章

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これでいいのかな……。 何とかしなくちゃと思って行動したはいいが、その後にどうすればいいかなんて全然考えていなかった。 そんな内心で焦る私を尻目に、先程から聞き慣れない言葉ばかりを浴びせる男。 「いやー、丁度よかったねー!仕事探してるなんてさ」 話を聞いて解った事と言えば、どうやらこの男はぽっかりと空いてしまった働き手を探していたという事だけ。 「はぁ」 それは喜ぶべき事なのに、私の口から出てくるのは何とも間抜けな相づち。 それ程までに言葉の奔流(ほんりゅう)に呑まれていた。 「うちはギャラも弾むし寮もある。お姉さん美人だし絶対売れるよ!健康にもうちは気を使うから、ばっちりそこらへんの保証はするしね!」 相変わらずの笑顔を張り付けての簡単な説明。 それだけ……? 「男の人の相手って、お酒を飲んだり話をするだけですか?」 あまりにも説明が不足している事に不安を覚えたが、何も解らない私にはそう聞くのが精一杯だった。 「うん!そうそう、そんな感じ!とりあえずうちの店に来てみなよ!それからまた社長も交ぜて話をして決めればいいじゃない!」 やはり不安が無い訳じゃない。 「解りました」 それでも私は、胸中の不安を悟られない様に、真っ直ぐに男の目を射ぬきそう返事をした。
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