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揺られる電車、その車内から私は空を見上げた。
気付けばもう、空が遠く感じる所まで来ていた。
空にある星よりも、地上に輝く星の方が遥かに眩しくて、目が眩(くら)みそうになる……。
でもそれは決して純粋に綺麗な輝きじゃない。
まばゆい光を放って、本当の自分の姿を隠しているだけ……。
それでも、私はそんな夜の街へと足を進める。
誰でもない、自分の意思で――。
これから何が起こるのか、何が待っているのか。
不安と期待の入り交じった、なんとも言えない高揚感。
心に決めた目的を、忘れない様にと固く握り締めた手。
すると、不意に車内でアナウンスが響き渡った。
どうやら目的地へと着いたみたいだ。
ふぅ、と強(こわ)ばった力を抜き、自分の荷物を持って始まりの出口へと。
空には光る、淡く光る満月が浮かんでいた。
まるで私を見守ってくれているかの様な、そんな優しい光だった……。
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