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楽しみにしてたのになぁ…
そんな事を思うと、少しだけ悲しくなった。
「ごめん!昨日聴きながら寝てて、ついうっかり今日寝坊してさ…」
「うーん。まぁそんな時もあるさ」
「ホントごめん!」
「良いよ良いよ!あ、じゃあジャケットをちょっと見せてよ」
私は差し出されたジャケットを手にとった。
私とアキラが共通して1番好きなアーティスト。
名前はアールグレイ。
いつもはノリの良い曲だけど、今回はジャケットからしてしっとりとした曲らしい。
「なんかロマンチックなジャケットだねぇ」
夕焼けの空をバックに、男女の手がのびて繋いでる絵。
影が長く伸びていて、なんだか甘酸っぱい感じがする。
「まぁな。今回は友達だった女の子に対するラブソングなんだぜ」
「ふぅん…」
あぁ、歌詞カードがあったらすかさず歌詞だけでも見てただろうに。なんでないんだ。
「あ、そうだ…奈々。」
「んー?」
「明日、日曜ヒマ?」
…日曜?
「…私はいつでもヒマ」
珍しいな。
アキラは日曜はいつもサッカーの練習してるはずなのに。
「ヒマならカラオケ行こうぜ」
「部活は?」
「あー…なんか顧問がさ、用事できたらしくて、練習できなくなってヒマになったんだよ」
…嘘っぽい。
まぁ、行けるんなら行きたい。
「でも、初めてじゃない?放課後以外で行くの」
「そ、そうだな」
「私、アキラの私服見た事ないんだよね」
「俺も奈々の私服見た事ねぇよ」
「まぁねー」
「ま、そん時にこの曲歌うから」
「あ!やった!」
いつものように盛り上がってその時のアキラの気持ちなんて、全く考えていなかった。
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