65人が本棚に入れています
本棚に追加
「歩……お前。約束、忘れたわけじゃないよな?」
「ああ」
それでも歩の表情は曇ったまま。
そして、その反応も目も、虚だった。
「オレとお前の力ならインターハイも夢じゃない。それだけの技術もあるし、コンビネーションだって……」
怜護の言葉は間違ってはいなかった。もし一年生が足りなくても、二年生がいる。
最弱とは言っても、二年生には経験があった。
そこに、怜護と歩が加われば……。
しかし、歩の耳には届かない。
そして、歩は閉ざされていた重たい口を開いた。
「ごめん、レイゴ。俺もインターハイに行きたいと思ってるよ。 でも、俺は勉強しなくても頭がいいお前とは違うんだ。バスケだけじゃ生きていけない。だから……」
歩の言った通り、怜護は勉強しなくても学年五十には入っていた。しかし歩は、下から数えた方が早い。
それにここは進学校。
勉強が第一。
それが教訓。
勉強出来ない生徒は、部活を諦めるのが正しい選択だ。
それを怜護は頭では理解していた。しかし、どうしても納得は出来なかった。
(あの時の約束が、こんなにも脆いはずない――。二人でインターハイ出るって約束したんだ)
「わかった。オレはお前の人生を決める権利なんてないからな。だけど、忘れないでほしい。オレは絶対にインターハイ出るから。お前と一緒に」
悔しさを隠しながら顔は笑顔を装い、歩の瞳に宣言する。
「……ごめん」
歩の言葉を聞いた瞬間、怜護は体育館から飛び出していた。
最初のコメントを投稿しよう!