異変

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「歩……お前。約束、忘れたわけじゃないよな?」 「ああ」  それでも歩の表情は曇ったまま。  そして、その反応も目も、虚だった。 「オレとお前の力ならインターハイも夢じゃない。それだけの技術もあるし、コンビネーションだって……」  怜護の言葉は間違ってはいなかった。もし一年生が足りなくても、二年生がいる。  最弱とは言っても、二年生には経験があった。  そこに、怜護と歩が加われば……。  しかし、歩の耳には届かない。  そして、歩は閉ざされていた重たい口を開いた。 「ごめん、レイゴ。俺もインターハイに行きたいと思ってるよ。 でも、俺は勉強しなくても頭がいいお前とは違うんだ。バスケだけじゃ生きていけない。だから……」  歩の言った通り、怜護は勉強しなくても学年五十には入っていた。しかし歩は、下から数えた方が早い。  それにここは進学校。  勉強が第一。  それが教訓。  勉強出来ない生徒は、部活を諦めるのが正しい選択だ。  それを怜護は頭では理解していた。しかし、どうしても納得は出来なかった。 (あの時の約束が、こんなにも脆いはずない――。二人でインターハイ出るって約束したんだ) 「わかった。オレはお前の人生を決める権利なんてないからな。だけど、忘れないでほしい。オレは絶対にインターハイ出るから。お前と一緒に」  悔しさを隠しながら顔は笑顔を装い、歩の瞳に宣言する。 「……ごめん」  歩の言葉を聞いた瞬間、怜護は体育館から飛び出していた。
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