“ケモバス”

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――時間が止まっている。  永遠に時間が止まってしまうかと思うような感覚。  さっきまでこの神聖な場を震わせていた歓声も、もう聞こえない。  コート上の選手、全ての観客、そして自分。  誰もが“希望”と“絶望”を乗せた一筋の美しい放物線を凝視する。  コートを照らす照明にも負けないように強く、そして優しい光を放つバスケットボールを。  これまでの試合で、これほど一本のシュートがゴールまで遠いと感じたことがあっただろうか?  この『ケモバス』で……。  いや、違う。  遠いんじゃない。  自分が遠ざけてたんだ。  このゲームを終わらせたくなかったから。  でも、ボールは結末に向かって進み続ける。  ゆっくり、ゆっくりと。  それでも、オレ達はどんな終焉が待っていようと、後悔はしない。  オレ等はもっと大切で大事なことを見つけたんだから――。
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