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「チィースッ」
そう声を発しながら扉を開ける。
目の前に広がるのは、二つのコートに四つのバスケットゴール。
ひんやりとした空気が肌に触れて、心地好く感じる。
照明はついていないらしく、朝の日差しだけがコートを照らしていた。
「チィースッ、おはよお怜護」
怜護と呼ばれたのは、先程バスケットシューズを結んでいた彼。一般にゴール下を任されるほどの身長と活発そうな顔立ちの少年。目はぱっちりとして、自身の漆黒な瞳が短めのスポーツ刈にマッチしている。
低めのテンションで手を挙げて反応し、周りを一通り見回した。
「……」
体育館の中にいたのは、先程声をかけた、中学からのチームメイト。短めの坊主頭が特徴の歩(あゆむ)と、爆睡中のコーチだけだった。
この高校にあるバスケ部は一年生六人、二年生八人の総勢十四人。
しかしほとんどの部員は朝練に来ていない。
全員揃うのは、たいていが放課後の部活だけなのだ。
そして、その十四人の中の二人。怜護と歩は某バスケ有名な中学の四番と五番。
キャプテンと副キャプテンだった。
中学のチームは本当に強く、東海大会にも出場した。
しかしこのチームは……。
将来のためといって、親に勉強を優先させられ、朝練に一年生二人しか来ないというバスケ最弱の進学校。
「獣帝国北高校」
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