37人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
「私の…せいじゃないよね?」
数十メートル先に見える川から突如噴き上がった水飛沫に、那知は背中に嫌な汗を感じた
―見なかった事にして…
川にくるりと背を向けて、何気ない日常に戻ろうとした
―その時
「誰かぁぁーー!!
助けてくれぇぇーー!!」
背中をビリビリと刺激する、悲鳴に近い叫び声が那智を直撃した
「まさか!!」
―誰か川で溺れて
再び体の向きを変え、那知は土手を駆け降り川へと走る
運動能力には自信がある
走りも泳ぎもその辺の娘には負けてやるつもりはない
ただ一つ気になる事があるとすれば――
「この服…
買ったばかりなのにな!」
背伸びして購入した赤いキャミソールと黒のパンツ
そんな雑念を振り払い那知は走った
ここの川は夏にはバーベキューで、春は花見で賑わう大切な場所
そんな場所で死人を出すわけにはいかないという使命感が那智を動かしていた
―この川は流れも穏やかだし、水深も………ん?
「向こう岸まで歩ける…よね」
バーベキューや花見で賑わう町民に愛された場所は、それなりに安全だった
「だ、誰か!!溺れる!流される!サメに!ホオジロあたりに喰われ…」
「川にホオジロはいないわよ」
最初のコメントを投稿しよう!