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子供が水面を叩きはしゃぐようにバシャバシャと水飛沫を撒き散らしている少年を、那知は冷ややかな目で見下ろす
この川は子供のスネ程度の水深しかなく、溺れることも難しい
少年は那智の声で我に還ったのか、バタつかせていた手足をピタリと止め
「………風が、心地良い」
「いや、無理があるでしょ」
爽やかな笑みで天を仰ぐ少年に、那知はすかさず突っ込んだ
「………誰だお前は」
少年は立ち上がり、一転して無愛想な表情を那知に向けた
「アンタこそ誰よ」
全力で駆けつけた結末の残念さ具合に那知の語気も荒くなる
―綺麗な顔……
この辺の子なのかな?
全身ずぶ濡れの少年をじっくりと見て、那知はそんな事を思っていた
髪は黒に見えたが、良く見れば深い緑色をしていて瞳の色も同じ色だ
肌は女の那知が羨ましく思えるほど白く透き通っていて、可愛い気のない眼差しを除けば美少年で通るだろう
「あなたどこの小学生?」
小柄な那知より頭一つ小さい少年に、素性を確認するべく問いかける
―迷子って事もあるし
無事が分かった時点で放っておいても良かったが、それも人情に欠けると思い、那知は最後まで付き合うつもりでいた
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