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―えーと、確か偉い人が言ってたのよね
君子、面倒事はトンズラ
「じゃあ、サヨナラ」
小生意気な視線に背を向け、那知はやや早足で河川敷を歩く
明日は大切な日
まさに青春の1ページと言える登校初日に
―面倒事は勘弁よね
自称ではあるが十八歳と言っている少年…いや青年を、わざわざ世話する事もないだろう
そう気持ちを切り替えた矢先
「おい!待て!」
今、一番聞きたくない台詞が那智の足を止めた
「……何よ」
体と首を90度曲げ、那知はあからさまに嫌そうな顔で振り向いた
「お前、名前は何だ?」
背丈とは反し、上から目線の青年が那智に訊いた
「那智…だけど?」
別に素直に答える義理も無いが、つい反射的に本名を言ってしまった那智
「“ナチ”か
俺の名は七ノ葉(ナナノハ)だ」
テクテクと那智に歩み寄りながら、七ノ葉が名乗る
「あ、そう……だから?」
互いに自己紹介を済ませはしたが、だから何だと那知は言いたかった
七ノ葉は那智の目の前で足を止めると、これまた憎たらしく口の端を上げ
「これから暫くお前の家に住む事に決めた
――有り難く思え」
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