いちばん

3/9
前へ
/151ページ
次へ
部屋の隅には、まだ段ボールに梱包されたままの荷物が幾つかあり、ポツンと中央に置かれたテーブルの前に七ノ葉が座る 「こらナチ 客人に飲み物の一つも出さないとはゆとり教育の弊害か?」 部屋の隅の段ボールの一つをゴソゴソと漁る那智に七ノ葉が言う 「誰が客人よ 飲み物まで強要するなんて居直り強盗みたい……あった!」 那智が声を弾ませ段ボールから引き抜いたのは一着の服 「アンタ さっさとソレ脱いでコレに着替えてよ」 那智はそう言って取り出した服を七ノ葉に突きつけた 「コレ……を?」 七ノ葉は目の前の服を見つめ、微かに口元が引きつった 体育着 「中学の時ので寝間着に使おうと思ってたけど…」 仕方無しにといった表情で、那智は七ノ葉に服を差し出した しかし七ノ葉の表情も厳しいものだった 「ナチ… 俺はこういう趣味を持つお前を責めはしないが、もう少し順序を踏んだ上で…」 「違うし!なんの趣味よ! 人が親切で着替えを提供しているのに!」 あらぬ疑惑を抱かれた那智が顔を真っ赤に怒鳴る その迫力のせいか、那智の優しさを理解したのか七ノ葉は 「ナチ……その、なんだ」 急にしおらしくなった七ノ葉に、那知の勢いも弱まる 「な、何よ?」 ―いい過ぎちゃったかな? すぐにカッとなる性格の自分に、那知は少し反省した 「着替えを覗く趣味も責めはしないが…」 「早く着替えろ!!」 反省はしたが……
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加