37人が本棚に入れています
本棚に追加
部屋の隅には、まだ段ボールに梱包されたままの荷物が幾つかあり、ポツンと中央に置かれたテーブルの前に七ノ葉が座る
「こらナチ
客人に飲み物の一つも出さないとはゆとり教育の弊害か?」
部屋の隅の段ボールの一つをゴソゴソと漁る那智に七ノ葉が言う
「誰が客人よ
飲み物まで強要するなんて居直り強盗みたい……あった!」
那智が声を弾ませ段ボールから引き抜いたのは一着の服
「アンタ
さっさとソレ脱いでコレに着替えてよ」
那智はそう言って取り出した服を七ノ葉に突きつけた
「コレ……を?」
七ノ葉は目の前の服を見つめ、微かに口元が引きつった
体育着
「中学の時ので寝間着に使おうと思ってたけど…」
仕方無しにといった表情で、那智は七ノ葉に服を差し出した
しかし七ノ葉の表情も厳しいものだった
「ナチ…
俺はこういう趣味を持つお前を責めはしないが、もう少し順序を踏んだ上で…」
「違うし!なんの趣味よ!
人が親切で着替えを提供しているのに!」
あらぬ疑惑を抱かれた那智が顔を真っ赤に怒鳴る
その迫力のせいか、那智の優しさを理解したのか七ノ葉は
「ナチ……その、なんだ」
急にしおらしくなった七ノ葉に、那知の勢いも弱まる
「な、何よ?」
―いい過ぎちゃったかな?
すぐにカッとなる性格の自分に、那知は少し反省した
「着替えを覗く趣味も責めはしないが…」
「早く着替えろ!!」
反省はしたが……
最初のコメントを投稿しよう!