とある朝…

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ーそれから10年…少年も16歳になり 高校生となっていた。 幼少期の孤独な学校生活が身に染み着いて、人を避けるのが習慣となり、数少ない友人とも遊ぶ事はあまりなく、休日は家で静かに過ごしたり出歩いても近所を彷徨く程度だ… 10年の年月の間に、近所にコンビニが出来たり、道路工事で家の前の道が広くなったりと変化があった、特に家の前の広い畑は、その全てが家を建てる土地とする為、長期工事が行われて騒音に悩まされた、そんな騒々しい工事が数年後やっと終わった年の夏…裏手の森からセミが五月蝿く鳴く季節である。 『夏休み』もちろん学生ならば長期間の休みは 面倒な勉強やテストから解放されるので万々歳と言った所だろう もっとも夏期講習やらなんやらで、学校以上に勉強に謀殺される学生も居るだろうが… 少年も同様に夏休みは楽しみだ つまらない勉強や興味が無いクラスメートと関わる必要が無いので毎日が気楽だから。 そんなネガティブ少年が住む家…彼の部屋の窓を叩く者が居る 『おはよう木村君 せっかくの夏休みなのに どこにも出かけないの?』と 肩の辺りまで髪を伸ばした少女が声をかけてきた。 『…霧島さん なんで玄関のドアじゃなくて俺の部屋の窓をノックするわけ?』 やや疲れたような声色で返事を返すが、不快そうな様子は無い…彼女は「霧島沙耶」と言う、今年の春に隣の家に引っ越してきた子で年齢は同じく16歳。隣に住んでいた老人夫婦は息子夫婦と一緒に住むとかで、去年の秋頃に引っ越して行き、隣は空き家となっていた、そこに霧島沙耶と、その両親がやってきたと言う訳である。 一方 声をかけられた少年は「木村翔」裏手の森で1人遊びしながら育った孤独派の少年。 『だって玄関に行くより 窓の方が近いんだもん』 『まあ、どうでもいいけどね…ところで何か用があるの?』 『今聞いたじゃない、どこかに出かけないのかって』 『特に予定は無いけど?』 『どっかに出かけないと勿体ないと思わない?まだ夏休みが始まったばっかりなんだしさ』 『うーん…』 木村は少し考えるように腕を組んでみせたが、実は全然考えてなかったりする。 『特に予定が無いなら、海に行かない?明日から両親と親戚の家に泊まりに行くんだけど、すぐ近くが海なんだよね』 霧島さん一家と泊まりがけで海か、確かに魅力的な提案ではある…。
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