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春香の無邪気な笑顔が頭に浮かんだ。俺は春香を愛してる。
「最後まで、ごめん。由美には世話になりっぱなしだな。それじゃ──」
俺は千円札をテーブルに置くと、喫茶店を飛び出した。振り返りはしなかった。そこに由美との恋は置いてきた。
俺はきっと、好きという気持ちがわからなかったんじゃない。好きになることに臆病になっていたんだと思う。
喫茶店を飛び出した俺は、春香に電話をかけようとポケットから携帯電話を取り出した。そこには一通のメールが届いていた。
_________
RE:RE:RE:RE:RE:
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ごめんね。隆ちゃんの部屋を掃除してるときに、由美さんからの手紙を見つけちゃったんだ。それを勝手に見ちゃった。あ、でも内容は読んでないよ。住所だけ。
ごめんね。
隆ちゃんが何回か寝言で由美さんの名前を呟きながら泣いてるのを聞いちゃったんだ。それでね、いろいろ考えて、こうしようって決めたの。由美さんも、やっぱり隆ちゃんが好きなんだってさ!よかったね!
それじゃぁ、三ヶ月ありがとう♪楽しかったよ!さらばだ(^^)
-END-
最後のメールまで笑顔。俺は心のある場所なんて知らないけど、これを送った春香の気持ちを考えると、確かにその時、心が締め付けられるのを感じたんだ。
すぐに電話帳から春香を選んで発信した。
何回かコール音が鳴り、繋がる。
「もしもし、俺だけど」
携帯電話を握る手に力が入る。
「あ、もしもし?隆ちゃん!由美さんとうまくいっ……」
春香は明るい声を装っていたけど、微かに鼻をすする音が聞こえる。きっと泣いているのだろう。俺は相手の気持ちに気付いてやれない馬鹿だけど、それくらいはわかる。
「何も言うな──」
俺は春香の声を途中で遮った。
「俺は春香を愛してる」
この言葉を言った瞬間、電話の向こうで春香はわんわん泣きだした。俺は無性に春香に会いたくなった。これがきっと好きって気持ち。
俺は春香に告白をして、やっと失恋することができた。そして、俺は新しい恋の道を歩き始めた──
-END-
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