本当の失恋

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「隆……私のこと愛してる?」  由美はよく俺にそうきいてきたっけ。その度に、俺は愛してるよって答えていたけど、付き合って一年、二年と過ぎるうちに、そんなん言わなくてもわかるだろと、無下にしてしまっていた。  急に記憶が鮮明に蘇る。由美と別れを迎える一ヶ月くらい前。由美が俺の家に遊びに来ていて、そう、その日も聞かれた。 「隆は、私のこと本当に愛してる?」  俺はまたかよといつもどおり冷たくつっぱねてしまった。考えてみれば、由美はこの時にはもう、別れることを考えていたのかもしれない。  そういえば、春香は俺に言葉を求めて来たことが無い。愛してる?どころか、好き?とか、俺の気持ちを確かめようとすることをしてきたことがなかった。でも、春香はたくさんの愛してるを俺にくれた。  なんで春香は俺の気持ちを一度も聞かないのだろう?俺といるとき、いつも笑顔だった春香。俺の気持ちを知らないままで、不安ではなかったのだろうか。三ヶ月もの間、愛してるどころか、好きという言葉さえ、俺は口にしなかった。
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