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好きってどんなんだったっけ?由美と付き合っていた時は確かに由美を愛していると感じていた。しかし、今、由美と別れ、春香と付き合っているのに、思い出の場所に行ったり、眠っているときに夢を見たり、度々、由美のことが脳裏を過ぎる。じゃぁ、今も、俺は由美を好きなのかというと、それさえもわからなかった。俺は好きという気持ちを見失っていた。
ふと、店の壁にかかっている時計に目をやると、待ち合わせの時間を十五分過ぎていた。春香が待ち合わせ時間に遅れるなんて珍しい。いや、初めてかな。
何も頼まずに、ずっと座っているのも、あれだと思い、とりあえず、何か飲み物を頼むため、メニューを開く。
長方形の少し大きめのメニューが俺の視界の半分を遮った。しばらく、何を飲もうか迷っていると、もう半分の視界に女の頭が横切り、そして、俺の正面に座った。
やっと、来たか。
「遅いよ、はる……」
メニューをテーブルに置いたところで、俺の時間は静止した。なんで?
俺の正面に座っていたのは春香ではなく、紛れもなく、俺に別れを告げたはずの由美だった。
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