本当の失恋

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「久しぶり」  久々に聞く由美の声。由美の声は至って普通。動揺しているのは俺だけのようだ。  また夢か?俺は辺りを見回した。ここは春香とのいつもの待ち合わせの場所で、由美と来たことは一度も無い。思い出の場所ではない。 「おう……久しぶり……」  春香と待ち合わせをしたはずなのに。混乱している俺はどきまぎして答えた。自分でもわかるくらいに心臓の鼓動が大きくなっている。夢でないことはすぐにわかった。久しぶりに見た由美は、長かった髪の毛をばっさりと切られ、ショートヘアになっていた。  二人の間を違和感のある空気が流れる。付き合っていた頃には感じたことのない空気。これが他人と恋人の違いなのかな。 「ご注文はお決まりでしょうか?」  メニューをテーブルに開いたままとまっている姿を見てか、ウェイトレスが注文を聞きにきた。 「あ、じゃぁ、コーヒーを」  俺に続いて由美も、私もと、二つコーヒーを注文した。 「なんで……ここに?」  俺は一番の疑問を投げかけた。
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