一日

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 太陽が昇ると共に目を覚ます。長年の習慣で自然とこの時間に起きてしまうけど、出来るならもっと寝ていたい。――でも、だめだ。この時間にしか出来ないことがあるんだ。  ガバッと勢いをつけて飛び起きる。そして廊下に人の気配がないことを確認する。  父親も母親もカイント――弟も、俺の習慣を知っているはず。そして、俺が自分たちと会いたくないことも知っていると思う。この時間の廊下に誰かがいたことは一度もない。  手早く静かに洗面所に向かい、身支度をする。以前は鏡を見ないで済んだのに、ひげが生えてきてからはそうもいかなくなった。  ひげは恐い。身内の男は皆ひげを生やしている。今の俺にも大人の男としての役割を求められているのか?  そうだとしたら俺に期待しないで、苦しいから。  今日も小刀でひげを剃り落とす。
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