回想

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 でもそんな修業しかない日々は9歳の秋に突如、終了した。  他の国の勇者が敵を送り返すことに成功し、争いを終結させたのだ。  世界は平和になって、ハッピーエンドを迎えたんだ。  不謹慎だが……、これを素直に喜べなかったのが俺だ。  俺は人生をかけた目標を無くしてがっかりした。  両親や5歳年下の弟は勇者だったはずの俺が、ただの子供に戻ったことにがっかりしていた。  失望させて申し訳ないとは思っていたけど、それよりも悲しかったことがある。  周囲の人間の哀れむような、面白がるような目だ。  手のひらを返したようにって、ちょうどあの時みたいなことをいうんだろうな。  王様はなにもおっしゃらなかった。  それから連絡を取ることもなく、王様は戦後間もなく崩御された。  王様は勇者でなくなった俺にどんな感情を持っていたのかは、もうわからない。
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