植村 大智 ① - Ⅰ

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「さってと、とりあえず部屋はこれくらいでいいかなぁ?」 荷造りされたダンボールが部屋の隅に鎮座し、その中から生活に必要な物を取りだし部屋へ配置した。 まだ片付けは済んでいないが、生活に支障はないだろう。 親の急な転勤によって引越し、この東橋町に移り住んで二日目になる。 明日から学校へ行けると言う事で、我ながら恥ずかしいが不安と言うかどこか緊張してしまう。 16年間住み慣れた故郷を離れるのは辛かったが、若者としては、東橋町のが都会として発展しているので、嬉しさと悲しさ、差し引き0と言った所だろうか。 この歳になっても思うのは友達できるかなぁ、なんてありきたりな事。だが友達のいるいないは学生生活に大きく関わってくるだろう。 んー、そろそろ寝ようか。 ふと確認した時計は夜中の2時を告げていた。 荷物の整理に思ったよりも時間をかけてしまっていたらしい。 部屋の電気を消し、ベッドに横たわる。先ほど感じた恥ずかしい不安は、まどろみゆく意識の中で、静かに溶けて消えていった。
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