―ズレ遺伝子研…っ管理所―

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「事故現場で遺体が捜しても見つからなかったから燃やせなかった。とのこと」 ―見つからなかったって・・・ 「そいつはどこで何をやっていたんだ?」 気になって暁燈がペンを止めて訊く。 「おそらく、崖で高く跳ぶ練習をしていたと思います」 「なぜ死んだ?」 「高く跳び、つかんだ岩が崩れてきたのかもしれません」 「岩の下敷きになったのなら遺体は・・・?」 「消えたのだそうです…」 「消えた…。そうか。それでそのヴァンパイアの歳は?」 「52歳です。」 「まだ若いな。」 この世界の52歳は人間で15歳に相当。 「そうですね」 「女の子の遺伝子に混ざったのはヴァンパイアだけですか?」 暁燈のペンがまた動き始めた。 「はい。今のところは…」 「そうですか。確か、ヴァンパイアの遺伝子が混ざった子には不死者狩りをさせるらしいな」 暁燈が言った。もう口調が敬語じゃない。 「そうでしたね。暁燈さん、不死者について知っていますか?」 歩美が暁燈を見ながら言った。 「前こういう仕事をしたことがあるので少しは…」 自信なさ気に暁燈が言うと 「ではもう一度勉強しなおしてもらう必要がありますね」 と歩美がにやっと楽しそうに言った。 「え…やらなければならないのですか?」 暁燈の顔が青ざめた。 「付き添いには危険が伴います。この仕事をする人は毎回勉強し直すのです」 「そ…そうなんですか?」 「曖昧なままじゃ困るのです。パートナーを必ず守り通さなければならないのですから。」 「そ、そうですよね・・・」 暁燈は諦めてやることにした。 「大丈夫ですよ。2回目は最初よりは軽いと思いますよ。みんな言ってますから。」 「そうでしょうか…?」 暁燈の心はさっきよりも沈んだ。 「そうですよ。女の子が育つまでの暇つぶしということに…」 「あれは地獄ですよ。」 暁燈が歩美の言葉を遮るように言った。 「苦労しないと大切なものは守れませんよ。」 歩美はできるだけ優しく言った。 「そう…ですよね…」 それに応えようと笑顔で言った。 「暁燈さん、落ち込んでいたらいつまで経っても…」
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