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すると、ざわざわと自分の前から騒ぐ音がする。
しかし、アリアは構わずイメージを続けた。
「門を通り抜けたら……話しかける」
アリアは独り言を漏らし、エーテルを流しながら、震わせるようにイメージした。
頭の中でポーン……とピアノのような音が響く。
その時、なにかを擦り合わせるような音がしてその音に思わず目を開けた。
「や、やったっ!」
目の前には棘の壁ではなく、アーチのようなものが出来ていた。
スムーズにイメージを現すことが出来たのが久しぶりなアリアには、それが飛び上がる程に嬉しかった。
「やっぱり静かな場所だからかな、集中出来た……」
また独り言を呟いていたが、突然、棘ではなく森全体がいきなりざわめきだしたのをアリアは肌で感じ取り、急いで短剣を構え、あたりを見回す。
木々がアリアにそれに気をつけろと言葉なく教えている。
しかし、どこをどう探しても『それ』は見つからない。
アリアは目を閉じる。
気配はある、どしどしと乱暴で重い足音も聞こえるが姿が見つからない……。
ならばとアリアはそのまま言葉を紡いだ。
「棘よ 我が力となり鞭となり 我を阻む敵を蹴散らせ」
紡ぎ終えたその時、目の前から殺気を感じ、アリアは目を閉じたまま、慌ててエーテルを放った。
「<ローズウィップ>!」
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