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直後、アリアの横を風を切りながら何かが通り過ぎ、アリアのすぐ前辺りで何かを思いきりひっぱたいたかのような激しい音と、空気が震える程の断末魔の鳴き声がした。
アリアは驚きで目を開くと、猪の顔でこん棒を持ったそれ――豚のような魔物の『オーク』が胸が切れたかのように一線、傷を付けられ、血を噴き出させて倒れていた。
傷の深さからやはり、魔物がアリアのすぐ近くまで来ていたのが分かる。
もう少しエーテルを放つのが遅ければ……と思うと、ゾッとする。
(集中するためとはいえ、目を閉じたのは自殺行為だったな……)
アリアはそう反省しながら、鞭に使った棘を元の位置に戻し、無線をつなげた。
『なんだ?』
間もあけずに隊長が出て来た事にアリアは少々驚いた。
「ア、アリアです。開きましたよ」
『おっ! よくやった。他の木属性のやつにはもう少し頑張って貰うから、お前は中を先に調べとけ。誰か寄越したほうがいいか?』
「いえ、大丈夫です」
『分かった。気をつけろよ』
「はい」
それだけを言うと、アリアは注意深くアーチをくぐっていった。
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