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とある山奥に、深い森に囲まれた一軒の廃墟がある。
戦前、そこで警官が一家皆殺しの末に拳銃自殺したとかいう話らしい。
そういう話があるせいかほとんど訪れる人もいないんだが、
時々夜中に廃墟の方から何かを叩くような音がするなんて噂もある。
俺達は盆休みの肝試しとして、深夜その廃墟へと向かった。
廃墟は山の上にあるので、途中の道路に車を停め、後は森の中を徒歩。
道なき道を30分ほど進むと、闇の中に廃墟の姿が浮かび上がって来た。
廃墟に侵入しようとした時、どこからか「カーン、カーン」と不気味な音が。
これが噂の怪音らしい。廃墟の中からではなく、裏手の方から響いてくる。
俺達は引き寄せられるよう、その音の方へ向かって歩き出した。
闇の中、何か白い物がチラチラ蠢いて見える。白装束を着た人影だった。
「丑の刻参りだ!」それに気付いた瞬間、背筋がゾッと冷たくなった。
忍び足で逃げ出したが、運悪く木の枝を踏みパチッと音が。
その音に気付いて振り返る白装束。女だった・・・が、顔は鬼のようだ。
「お・・・おまえらぁぁぁーーーーー!!!」髪を振り乱して追ってくる女。
逃げながら「マジで殺される」と思った。無我夢中で森の中を逃げた。
やっと道路まで出ると、突然「何やってんだ君達?」と呼びかけられた。
お巡りさんだった。俺達は息を切らせながら彼に事情を伝えた。
「なるほどな・・・よし、私が見てきてやろう。君達はもう帰りなさい」
俺達は促されるまま、半ベソになりながら車まで戻り、急いで逃げ帰った。
次の日、あの廃墟の傍で白装束を着た女の自殺体が見つかった。
拳銃自殺だったらしい。・・・まさか拳銃を持っているとは思わなかった。
あと少し逃げるのが遅れたら、あの女は俺達を銃撃したのかもしれない。
今思うと本当に背筋が寒くなる。霊なんかより人間の方がよっぽど怖い。
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