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月刊ペイズリーという雑誌がある。
高校から20代前半の女性をターゲットにしたファッション誌だが、他誌との差別化を図った結果、巻末に『都市伝説』や『オカルト』、果ては『超科学』、『超常現象』と言った類いの非現実的記事を連載しているのだ。
それが意外にも大衆の反響を呼び、部数は月を増す毎に倍増していった。
勿論、その部数を確保した理由は巻末連載のみの功績ではなく、斬新なロープライスファッション記事の充実とモデルのアイドル性も大きく売り上げに貢献している。
その中でも、『スバルちゃん』と呼ばれ親しまれるモデルの人気は眼を見張るものがあり、ファッション業界のみならずシネマやトレンディードラマ、バラエティーにCM出演など顔を見ない日がない程の活躍を見せていた。
東北から、憧れを抱き観光に訪れた高校2年生。
初めて目にした人通りの多さに圧倒され、交差点で立ち尽くす少女に一人の業界関係者が声を掛けたその時、『スバルちゃん』が誕生したのである。
それから5年という月日が駆け足で過ぎ去り、『スバルちゃん』は彼女自身も現実味を失う程に巨大な存在となっていた。
人気が出始めた頃は、街を歩けば声を掛けられ、ビルのポスターを見上げればあちらこちらに自分の笑顔が幅を利かせている光景に圧倒された。
だが、そんなことが全国に溢れ、公共機関での移動も一切なくなり、実際の『社会』から一歩踏み外した感覚に支配されるようになった現在。
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