第二十四話:『妄執の末路』

13/15
前へ
/579ページ
次へ
――時を同じくして。 暗闇の中で、スバルは一人の青年と対峙していた。 「嘉村……伊達、くん」 色素の無い白い肌と髪、赤々と光輝を放つ瞳。 「何で、私のところへ?」 私はもう死んだんだよ? そう言い掛けて、スバルは口をつぐんだ。 「君を助けたかった……」 伊達はゆっくりとスバルに近付き、その頬にそうっと触れる。 何の掛け値もない感情がそこにあった。 「いや」 絶大な超能力を宿す証、『REDRAM』が鋭い光を放ってスバルを見詰める。 「助けたい。今でも」 「でも、伊達伸太郎……貴方は佐坂達に」 「そう、オレはあいつらに敗れ……そして死んだ」 13の力を獅島や室町達へ渡す為、自らのそれと御堂、スバルの力を託し『特務機関』の襲撃で命を落とした伊達。 「でもな、ただじゃあ死なない」 伊達はそう言って微笑み、スバルの手を取って両手で握りしめる。 「嘉村伸太郎が君に告げた気持ちは伊達伸太郎としても同じだ」 「えっ」 「だが、君の気持ちがこっちに向いていないのも解ってる」 伊達の手は冷たく、氷のようだった。 スバルは血の気の通わないその手に包まれたままで、伊達から眼を逸らす。 「私は……」 「君は最期を見届けるべきだ。獅島の……コウの運命を……それが望みだろう?」 「別に、私はコウを……」 弁解するかのように呟くスバルの頭を、伊達は優しく撫でた。 「スバルは強いな」 嘉村が魚宮に向けた時と同様の、純粋な笑顔が伊達に浮かぶ。
/579ページ

最初のコメントを投稿しよう!

609人が本棚に入れています
本棚に追加