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――時を同じくして。
暗闇の中で、スバルは一人の青年と対峙していた。
「嘉村……伊達、くん」
色素の無い白い肌と髪、赤々と光輝を放つ瞳。
「何で、私のところへ?」
私はもう死んだんだよ?
そう言い掛けて、スバルは口をつぐんだ。
「君を助けたかった……」
伊達はゆっくりとスバルに近付き、その頬にそうっと触れる。
何の掛け値もない感情がそこにあった。
「いや」
絶大な超能力を宿す証、『REDRAM』が鋭い光を放ってスバルを見詰める。
「助けたい。今でも」
「でも、伊達伸太郎……貴方は佐坂達に」
「そう、オレはあいつらに敗れ……そして死んだ」
13の力を獅島や室町達へ渡す為、自らのそれと御堂、スバルの力を託し『特務機関』の襲撃で命を落とした伊達。
「でもな、ただじゃあ死なない」
伊達はそう言って微笑み、スバルの手を取って両手で握りしめる。
「嘉村伸太郎が君に告げた気持ちは伊達伸太郎としても同じだ」
「えっ」
「だが、君の気持ちがこっちに向いていないのも解ってる」
伊達の手は冷たく、氷のようだった。
スバルは血の気の通わないその手に包まれたままで、伊達から眼を逸らす。
「私は……」
「君は最期を見届けるべきだ。獅島の……コウの運命を……それが望みだろう?」
「別に、私はコウを……」
弁解するかのように呟くスバルの頭を、伊達は優しく撫でた。
「スバルは強いな」
嘉村が魚宮に向けた時と同様の、純粋な笑顔が伊達に浮かぶ。
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