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「スバル……」
伊達は呆然としながら、スバルを呼んだ。
覗いたその瞳が、揺れているのが解る。
「そんなの、自分の自己満足だけでしかない! 中途半端な優しさを押し付けているだけじゃないか!」
「オレは別に、崇高な目的を掲げてなんかいない。最初から『仲間を助けたい』、それだけだ。それが悪いことか? 何処を見てもそうだろう? 皆、自分の事しか考えていない。皆、恐ろしいまでに独善的だ。それを理屈で包み、さも慈善のように振る舞う位なら、最初からそんな奴等は消し去ってしまえばいい!」
伊達とスバルの視線がぶつかり合う。
スバルが見詰める『REDRAM』はとても力強い意志の炎を灯し、その奥にほんの少しだけ燻る何かが揺らめいていた。
「ダメだよ……」
そっと、スバルの瞳から雫が伝う。
それを目の当たりにした伊達が息を飲んだ所を、スバルが抱き締めた。
「信じなくちゃ、人を……そしてそれよりもっと、自分の気持ちやしていることの正しさを信じなくちゃ……」
「オレは……」
スバルの身体から離れ、伊達は少しだけ後退る。
「オレは手段なんかどうでも良かった……ただ、春河都希雄という一個人の欲に潰された13人の運命を変えたかっただけだ……」
伊達はそう告げると、スバルに背中を向けた。
「待って!」
慌ててそれを追い掛けようとするが、スバルがどんなに急いでも何故か伊達には追い付けなかった。
「後はコウに任せた。スバル、お前はそれを迎えれば良い」
「伊達くんっ!」
光が、射し込んだ――
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