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室町はベッドから降りると、獅島を横切り書棚から本を数冊取り除く。
そうしてできたスペースに手を入れる。
「玻璃崎燕ちゃんのことより……私の方が気になるでしょう?」
室町が艶やかに笑う。
と、鈍い音と共に書棚へ埋めた手が奥へと沈んだ。
「私が何故、室町花恋という名前なのか……何故、写真の女性も同じ名前なのか……」
「お前」
「私の秘密を知りたいのよね?」
書棚へ沈んだ室町の手が、一冊の革をなめした本を取り出す。
「お前、カレンじゃねえな」
「私は室町花恋よ。でも、確かにあなたの知るカレンちゃんではないかも知れないわね。」
室町は手にした本を開くと、獅島の前に差し出した。
「御神曹(そう)博士と春河都希雄博士は、高校からの親友だったのよ」
「何を……!?」
本の間から出てきたのは、一枚の写真。
春河博士の研究室で見た本人らしき青年と、つい先程引き出しの中で見つけた写真の男が並んで写っている。
「そして私は、御神博士を愛していたわ……」
「ふざけるな!」
差し出された本を払い退け、激昂する獅島。
室町はそれを黙って追い掛け、敷き詰められたビニールシートから本を拾い上げると、優しく埃を払って胸に抱いた。
「お前は誰なんだ……!」
「私は『恐るべき子供達』の行き着く先……獅島孔、貴方はまだ欠片を残していたわね……」
再び本を開く室町。
何も描かれていない白紙のページが獅島の眼前に突きつけられる。
その刹那、獅島は身体から透き通る小さな結晶の欠片と共に、自身の『精神』が室町の元へ吸い込まれて行くのを感じた。
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