第二十五話:『一秒先は未来』

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――獅島は虚空を急速に進んでいた。 流れる景色は黒そのものだが、点々と光る赤い輝きが見る間に近付いてくることで、自身が弾丸のような勢いで何処かへ飛ばされていると言うことだけが解る。 そして暫くの後、獅島が着地した場所は、先程と全く変わらない地点だった。 「なんだこりゃ……」 呆然と呟く獅島を、唐突な頭痛が襲う。 「力に……負荷が……」 まるで自制の利かない膨大な力を使ったかのような疲労感を覚えた獅島。 と、その時。 視界に映る『御神邸』の異様さに獅島が気付いた。 床や窓。 書棚からデスクにベッド、スチールのワゴンと医療器具。 その全てがまだ新しい美しさを輝かせていたのである。 「げっ……」 変わらないのは、自分自身と目の前に立つ室町。 いや。 室町は違った。 彼女は、一瞬前まで身に付けていたロリータから綿の白いワンピースに服を変え、その目映いまでの白に赤い花弁を散らせていた。 そして、同様にその腕や頬にも。 「曹さん?……違う……」 か細い声で室町が啼く。 「えっ……」 獅島は何か言い掛けるが、あまりの唐突さに思わず後退りした。 「だって、曹さんは」 室町が指を差すのと、獅島の踵が何かにぶつかったのが同時だった。 勢い良く、後ろを振り向く獅島。 床の上。 赤い水溜まり。 それを生み出す、30歳位の青年。 写真の男だった。 「コイツ……ッ!」 色褪せた写真に見た人物が、そのままの姿で目の前に横たわる事実に、獅島は戦慄した。
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