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刹那、空気が歪んだかと思うと、獅島の身体が吹き飛び壁に打ち付けられる。
何とか倒れずに持ちこたえた獅島だが、顔を上げた時には既に室町は家の外へ走り去っていた。
「サイコキネシス……」
その身に受けた威力を噛み締めて呟き、獅島は再び後を追う。
そこでただ一つだけ確信できたこと、『自分自身が過去へ瞬間移動した』ということをはっきりと自覚した獅島。
ここは22年前の世界。
走り去った室町は、写真に写っていた獅島の知る室町花恋と瓜二つだった女性。
そして男性、御神曹と呼ばれた彼は獅島の父親である。
「ってことは、オレは……」
玄関を出た獅島。
海岸線に室町の姿はない。
と、後方に空気の歪みを感じて振り返る。
傾斜する切り落としを挟んだ山々に広がる海辺の街が視界に入る。
そこに、尋常ならざる彩りを加えて――
「バカなッ」
獅島は口から絶叫を迸らせ、瞬間移動すら忘れ切り落としを駆け上がる。
街の民家や木々は業火に包まれ、道路も大地震でも起きたかの如く無惨に砕かれていた。
その中に埋もれながら、膚を焼き肉を爛れさせもがき踊る人々。
老いも若きも見境の無い虐殺が、阿鼻叫喚を轟かせながら一帯を支配していた。
「カレン!」
最早手の打ち様がない凄惨さに、滝のような汗が噴き出す。
獅島はむせ返る灰と死臭の中を駆け抜けて、街の中央部まで入り込むと漸く綿のワンピースを目に留めた。
「お前……貴女は、室町花恋さんでしょうっ?! もう止めてください、どうしてこんなことを……ッ!」
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