第二十五話:『一秒先は未来』

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獅島が『REDRAM』で手に入れた、『ソーマ』。 超能力者を超えて、神の領域にまで力を高めるその秘薬。 獅島はその一部を、佐坂の血液を介し傷口から取り込んでいたのである。 それが『不老不死』と『超身体』により急速に体内を巡り、死を賭した精神が支配した。 獅島の『心』が、呪われた超能力者の歴史を制圧した瞬間だった。 春河都希雄が、眼前に現れる。 焼け落ちた街は野原になり、そこに一つだけ立つ墓標の前で春河は泣き崩れていた。 「必ず、必ず来世では幸せになろうな……?」 呟いた春河に、獅島は問いを投げた。 「あんたは、その人を……?」 「ああ、愛していた……彼女は感電で死にかけたが……凄まじい生命力で……私が命を掬った……でも……」 「お前には振り向かなかった」 「違うッ」 春河は悲鳴を上げ、見下ろす獅島の胸ぐらを掴む。 「彼女は事故の後遺症で……精神を傷付けただけだ……その証拠に、彼女は私の子を産んでくれた……きっと、心さえ取り戻せたのなら……」 「まさか、お前……!」 獅島は手を振り払い、春河の首を片手で掴み墓石に身体を打ち付けた。 「娘は凄いぞっ! 花恋と瓜二つだ……顔も、能力もなァ……!」 「ッのヤロウ……!」 「私は花恋を使って最高の超能力者を造り出して見せる! そうすればきっと、私を歯牙にも掛けなかった学会の奴等や花恋を邪険にした奴等も私達に平伏すだろう……!」
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