第二十五話:『一秒先は未来』

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獅島の拳が、春河の顔面を打ち抜いた。 春河は飛び上がりその場から逃げ出そうとするが、余りの強い衝撃に体勢を維持できず墓石にもたれかかる。 「テメェの歪んだ性根のせいで!」 その後ろ髪を捩り上げて、強引に正面を向けると、腫れ上がった顔面にもう一撃、獅島の拳がめり込んだ。 「ぐぶっ」 「どれだけの人が運命を狂わせたと思ってんだッ!」 身を屈ませてよろめく春河へブーツを捩じ込もうとする獅島。 それと同時に淡い光の粒子が取り巻き始めた。 蹴り付けようとした足が、空間から消えていく。 「なッ……勝手に……!?」 粒子は身体を登って行き、怯える春河の眼前で獅島の肉体を『飛ばした』。 再び、時間が流れ出したのである。 「コントロールが未だ利かないのか……感情で発動しちまうみてぇだな……」 獅島の身体が、急速に進む時間の中に立つ。 歯を食い縛り睨み付ける景色の先が、徐々にはっきりと浮き出し始めた。 「お帰りなさい」 あの、獅島の良く知る室町花恋が立つ22年後の『御神邸』。 「あんたは……」 「解ったでしょう? 13の力が何をもたらすのか……春河都希雄は、私を甦らせることを目的の一つとしていた……限り無く遺伝子の近い、この器を使って」 「貴女は、母さん……」 室町は少しだけ寂しそうな瞳を見せた。 「正確には、クローン……春河都希雄の『恐るべき子供達』計画のゴールは、超能力と科学の融合による『新しい生命の創造』だった」
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