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僕は再び恭介のほうに振り向いた。
とりあえず、恭介には止血が必要だ。
その出血をまず止めなくては、身体からどんどん大切なものが失われてしまう。
理樹「なにか……ないか……」
僕はなにか傷口をふさぐものがないか探す。
布でもなんでもいい。
とにかく、なにか血を止めるものを…!
理樹「悪いんだけど、鈴!一緒にあの中からなにか布みたいなものを探してくれないかな。とにかく血を止められるものを…!」
鈴「わかった!」
横転したバス。
散乱した生徒の私物やガラスの破片。
そして漏れ出たガソリンの川。
いつ引火して爆発してもおかしくない危険な場所だ。
だけどあそこに戻らなければ、恭介は助からない。
理樹「……いや。鈴はここにいて」
駆けだそうとした鈴を、僕は手で制する。
鈴「なんでだっ! 早くしないと恭介が…!」
あの惨状を見て気付いた。
いや、最初からわかっていたはずだった。
あそこにはガソリンの川が流れている。
それも、さっきより明らかに量を増している。
危ない。あれが爆発したら、本当に助からない……。
そんな所に鈴まで連れていくことはできない。だから僕は一人で行くことにした。
理樹「僕が……」
今にも爆発してしまいそうなところに飛んでいき、目的の物を探す。
あそこなら絶対にあるはずだ。
僕が地に足を踏みしめ、今まさに駆けだそうとしたとき―――
?「あなたが行くことはないわ」
誰かの、どこかで聞いたような、そんな少女の声が聞こえた。
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